メルカリがPhotoroomを活用して出品者の信頼を高め、出品数を数百万件増加させた方法
Photoroom導入前の課題
出品者は、散らかった部屋やプライベートな背景を気にして出品をためらっていた。
一般出品者は、生活感のある空間での撮影を避け、出品を断念することも多かった。
iOS SDKや他社ツールを試しても画像品質が低く、改善につながらなかった。
その結果、多くの出品が途中で放棄され、供給量が減少した。
Photoroom導入後の変化
Photoroomの自動背景ぼかしボタンにより、出品者の撮影体験が大きく変化。
APIを通じて毎月数百万枚の画像をシームレスに処理。
ライトユーザーからヘビーユーザーまで利用が拡大し、出品数が着実に増加。
利用率10%で全体の出品数を1%押し上げることを目標としており、日本最大級のC2Cマーケットに大きな影響を与えている。
「完璧主義」が招く出品の壁
Nick Pittoni氏は、イギリスからドイツ、スペイン、そしてアメリカまで、世界各国のマーケットプレイスを見てきました。しかし、日本の出品文化ほど特異なものはなかったと語ります。
「日本では出品者にも購入者にも非常に高い基準があります。 経験不足が見えると、すぐにマイナス評価がつくこともあるんです。」 — Nick Pittoni氏(株式会社メルカリ、AI/LLM コンシューマープロダクトリード)
こうした文化的背景が、出品者に「完璧な出品をしなければ」という心理的なプレッシャーを与えていました。その結果、多くのユーザーが出品自体をあきらめるという現象が発生。メルカリのようなフレッシュな在庫が価値を生むマーケットでは、これは直接的な機会損失につながっていました。
細部までこだわる文化が生むボトルネック
日本の出品者は、キズや汚れの有無、状態を正確に伝えるため、CDやゲーム裏面の反射角まで計算して撮影することもあります。この徹底した透明性が信頼を支える一方で、Nick氏のチームが行ったユーザーインタビューでは、「撮影環境」そのものが出品を妨げていることが明らかになりました。
「多くの出品者が、どこで写真を撮るかを非常に気にしていました。 日本の住宅は狭く、背景がどうしても生活感のある映り込みになってしまう。」 — Nick Pittoni氏
その結果、背景を見せたくないあまり出品を延期したり、途中でやめてしまう人が増えていたのです。
ワンタップで背景をぼかす、新しい出品体験
Nick氏はこれまでにも、Photoroomの初期版やiOS SDK、他のAIツールを使って出品体験の改善を試みてきました。しかし、どのツールでも品質に満足できず、 購入者のコンバージョンにも変化は見られませんでした。
再びPhotoroomと連携した際、チームは「購入者体験」ではなく「出品者の自信」という本質的な課題にフォーカスしました。
Photoroomの背景除去APIは導入が非常にスムーズで、わずか3〜4名のエンジニアで2〜3ヶ月実装・リリースまで完了。機能面では、リアルな商品の質感を残したまま、背景を自然にぼかすことを重視しました。
出品者は撮影画面でボタンを1回タップするだけ。瞬時に背景がぼけ、プライベート空間を隠したまま商品を撮影できます。
「PhotoroomのAPIは非常に扱いやすく、ビジネスチーム・技術チームとの連携もスムーズでした。少人数のチームでも短期間で本番環境まで進めることができました。」 — Nick Pittoni氏
Photoroomのインフラは、毎月数百万枚規模の画像を高速処理しながらも、出品体験を遅延なく維持。メルカリのエンジニアリングチームはより戦略的な開発に集中できるようになりました。
Nick氏が最も感銘を受けたのは、品質だけでなくPhotoroomの処理規模でした。メルカリは数十億件の出品を抱える複雑なマーケットプレイスです。Photoroomの強力なインフラを活用することで、数百万枚規模の画像をスムーズに処理でき、エンジニアリングチームはより戦略的な開発に集中できるようになりました。
「Photoroomは、出品者向けに毎月800〜900万枚規模の画像を処理していますが、出品体験を損なうことはありません。」 — Nick Pittoni氏

導入後の成果
出品数の大幅増加
Photoroomの背景ぼかし機能は、単なる画像処理機能ではなく、「生活感を見せたくない」という人間的な心理的障壁を取り除くものでした。この変化により、何百万件もの新しい出品が生まれました。
「背景ぼかしを導入してから、一般出品者の平均出品数が明確に増え、 全体でもポジティブな影響が見られました。」 — Nick Pittoni氏
想定外のユーザー層に広がる利用
Nick氏は当初、ライトユーザーの利用を想定していました。しかし実際には、プロ出品者やヘビーユーザーの方が積極的に採用していたのです。既に独自の編集フローを持つ彼らが、Photoroomの「アプリ内で完結する手軽さ」を評価していました。
小さく見えて大きなインパクト
メルカリでは、背景ぼかし機能の利用拡大を目指しており、利用率10%でマーケット全体の出品数を1%押し上げることを見込んでいます。
「具体的な数値で言うと、ユーザーの約10%がこの機能を使うことで、 マーケット全体の出品数を1%増やすことを目標としています。」 — Nick Pittoni氏
一見すると1%という数字は小さく見えるかもしれません。しかし、メルカリのような大規模なC2Cプラットフォームでは、それが取引総額(GMV)や収益に非常に大きな影響をもたらすのです。
出品者の自信を取り戻す
この機能により、出品者は撮影場所を気にせず出品できるようになりました。日本では、若い世代が高齢の親の代わりに不要品を出品するケースも多くありますが、そうした場所では撮影が難しいこともしばしばあります。しかし、部屋の散らかり具合や古い床のデザインなど、これまで気になっていた背景も、もう心配する必要はありません。
「Photoroomは、出品者が自信を持って大切な商品を紹介できるようサポートしています。出品写真を撮る際の不安をなくすことで、誰でも、どこからでも、いつでも出品できるようになるのです。」 — Nick Pittoni氏


今後の展望
Nick氏のチームは、背景ぼかし機能の利用拡大に注力する一方で、「ビジュアルパートナー」としてのPhotoroomと継続して連携をしています。
「Photoroomチームとは常に連携しながら、新機能を学び、テストを重ねています。最近では、照明を改善する最新機能も試してみました。」 — Nick Pittoni氏
そしてNick氏はこう締めくくります。
「AIでは新しい技術に目を奪われがちですが、 本当に大切なのはユーザーが抱えるリアルな課題を解決すること。 Photoroomはその価値観を共有できるパートナーです。」
数百万枚の画像を、速く、美しく。Photoroomは、メルカリのようなチームの時間を節約し、手間を減らしながら、すべての出品写真を美しく、プロ品質に整えます。



















